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僕は島が嫌いだった -
島を離れて、福岡県で営業の仕事をしていたある日。
父から連絡があった。「工場を建てるから戻ってこい」
嫌いだった故郷の土。海のにおいと波の音、そしてウミネコの声。
いつもの細い道を歩いていくと、そこに立派な工場が建っていた。
日笠山水産株式会社。
父と話をした。甑島の現状と父の夢、そして覚悟。
戻ろう。そう決めた。
福岡県に戻り、会社の看板を作った。父と共に走る決意をした。
はじめて漁に出た。
海に出て分かる父の背中。
父が感覚を研ぎ澄ます。きびなごがそこにいる。
父に近づきたい。
海に潜るようになった。
魚の動き、潮の流れ、水面下の地形。海を知ることからはじめた。
きびなごが獲れるようになった。
父が不在の漁ではじめて甑島の漁師間で水揚げが1位になった。
意気揚々とした。
しかし翌日、父はその倍の水揚げをした。
届かない父の背中。
自ら潜って海を学び、父から漁を学んだ。
ある日、父が言った。
太誠、船を持ってみるか?
心が震えた。父と同じ「船長」というステージに立てる。
父に勝ちたい。
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